
初演のときは串田和美、佐藤アツヒロだったキャストを今回は佐野史郎、向井孝成に変更されています。
初演のときに観ていなかったので、今回の再演は観ようと思っていたのですが、色々と・・・。
なんとか楽日に行くことが出来ました。
坂手作品らしく、凄くリアルなセットの中で、細かいところまで伝えようとする台詞が回っていきます。
現在と過去、現実と想像の世界が入り乱れ、大人の恋の話が展開していきます。
良いお芝居だと思います、多分。
しかし、私には話の奥行きが見えてきませんでした。少し残念な印象が残ってしまった。
平成19年度公共ホール演劇製作ネットワーク事業
「いとこ同志」
作・演出 坂手洋二
出 演
小説家の女 ミイ ・・・・・・・・・・・ 渡辺美佐子
ミイのいとこ タックン ・・・・・・・・ 佐野史郎
若き日のミイ/ミイの姪 ・・・・・・・ 宮本裕子
若き日のタックン/ミイの息子 ・・ 向井孝成
会 場 東京芸術劇場 小ホール1 (2007年7月27日〜8月5日)
松本公演 まつもと市民芸術館実験劇場 2007年6月19日〜21日
宮城公演 仙南芸術文化センターえずこホール 2007年6月28日
千葉公演 君津市民文化ホール大ホール 2007年7月1日
相模原公演 杜のホールはしもとホール 2007年7月4日
滋賀公演 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール中ホール 2007年7月7日、8日
宮崎公演 宮崎県立芸術劇場演劇ホール 2007年7月10日
北九州公演 北九州芸術劇場中劇場 2007年7月14日〜16日
沖縄公演 沖縄市民小劇場あしびなー 2007年7月21日、22日
<以下、ネタバレあります。ご注意を!>
ものがたり
夜行列車の客車内。
車内にはただ一人、サングラスをかけた女が座っている。そこに、同じくサングラスをかけた男が通りかかる。
女が座っていることに気が付いた男は話しかける。
「ここに座ってもいいですか?」
実は2人は知り合いである。いとこ同士。
女(ミイ)は小説家。男(タックン)は特殊工作員らしい。
女は、男が行ってきたことを連作の探偵小説『いとこ同志』にして、世に出していた。
隣の車両に若い男女が乗り合わせている。この2人もいとこ同士。ミイの息子と姪である。
この2人は結婚をしようとしている。母親のミイに結婚のことを話しに別荘へ行くところなのだ。
若い2人の姿は、やはり恋愛関係にあったミイとタックンの若いときの姿に重なり合っていく。
現在と過去、存在と記憶、現実と虚構を交錯させながら、4人を乗せて夜汽車は終着駅へと進んでいく・・・・・・
昔、ミイとタックンは、いとこ同士で恋をしてしまう。ミイは近親婚を気にして、タックンとは離れることにします。
ただ、こうして夜行列車で会うことは続けている。小説を書くため、そして、記憶障害に陥っているタックンのために。
ミイは、連作小説の最終回を書きます。
最後、主人公のタックンは、太陽の日差しに溶けて消えてしまう。
そして、ミイは、この話の初めのところは絶対に書かなかったといいます。
それは、いとこ同志の「恋」のことでした。
2人の約束、『生きていることを楽しんでいないように見えたら、離れていく』こと。
物語の中で、この約束が大きな意味を持っているように見えました。
良いお芝居でした、多分・・・w。
役者さんも上手いし、構成もしっかりしています。完成度も非常に高いです。
ただ、話の展開や言葉に“深み”が感じられなかった。薄いんですよね、物語の骨格が。
調べたことを並び立てただけでは、お話は面白くならないんだなぁ・・・と素直に思ってしまった。
最後まで見せてくれたのは、2人の女優さんの演技力。そして、なんとなく漂っている佐野さんの存在感。
この豪華なキャストは、ただ者ではありません。