150131 sansaku rogo T.jpg散策しているような日常のなかで、素晴らしいものが見つけられたらうれしい。
そんなことを考えながらブログを書いています。

2007年09月22日

「アルゴス坂の白い家」新国立劇場


070920 Argos.jpg新国立劇場開場10周年にあたる2007/2008シーズン、新たに鵜山仁さんを演劇・芸術監督に迎えての第1弾として、ギリシャ悲劇を題材にした「三つの悲劇」(三部作)が上演されることに。
その第1作が「アルゴス坂の白い家−クリュタイメストラ−」。鵜山仁さん演出。川村毅さんの作。

一昨日(20日)の初日に行ってきました。

ギリシャ悲劇を現代の日本にあてはめて、日本人としての悲劇を見せようとしてます。しかし、話の筋を現代に置き換えてなぞるものではありません。アトレウス家の悲劇をモチーフにして新しい物語を作っています。
クリュタイメストラは『女優』、夫アガメムノンは『映画監督』、愛人アイギストスは『シナリオライター』、次女エレクトラは『作家』となって、悲劇を再生する・・・パンフ的にはこういうことみたいです。

新国立・中劇場の充実した舞台装置(舞台が移動するは、回転するはw)を使って、面白い転換がありました。
また、笑の要素も所々にあって、飽きさせない工夫も見えました。

面白いお芝居だと思います。・・・ただ、私にはあいませんでしたがw。日本の悲劇として再生させるといいながら、悲劇の実態にズレはなかったか?
まあ、あまり深読みせずに素直に見るべきなのでしょう。

上演時間 2時間50分(休憩20分)。少し長いですが、飽きることはありませんでした。複雑な人間模様を上手に描いていると思います。
私にはあわなかったとはいえ、いいお芝居でした。2、3作の「たとえば野に咲く花のように」と「異人の唄」をぜひ見ようと思ったのですから。


新国立劇場開場10周年記念フェスティバル公演
三つの悲劇―ギリシャから Vol.1
「アルゴス坂の白い家−クリュタイメストラ−」
作     川村毅
演 出   鵜山仁
出 演
  クリュタイメストラ/島岡の母
        ・・・・・・・・・・ 佐久間良子
  エウリピデス ・・・・・・・ 小林勝也
  アガメムノン ・・・・・・・・ 磯部勉
  エレクトラ ・・・・・・・・・・ 小島聖
  勝山/ヘクトル ・・・・・・ 有薗芳記
  島岡 ・・・・・・・・・・・・・ 中村彰男
  アイギストス ・・・・・・・ 石田圭祐
  イビゲネイア ・・・・・・・ 篠崎はるく
  オレデウス ・・・・・・・・・ 山中崇
  ピュラテス ・・・・・・・・・ 松本博之
  カッサンドラ ・・・・・・・・ 李丹
  クリソテミス ・・・・・・・・ 山田里奈
会 場   新国立劇場 中劇場 (2007年9月20日〜10月7日)



<以下、ネタバレあります。ご注意を!>
ものがたり
夫アガメムノンへの憎悪を抱く妻クリュタイメストラは愛人のアイギストスと計って、夫を殺害するが、息子のオレステスと娘エレクトラに復讐の機会を狙われる・・・。『アルゴス坂の白い家』は、この「ギリシャ悲劇」を題材にした現代演劇を上演しようとしている現代日本人の物語。「女優」「映画監督」「シナリオライター」「新進作家」が家族として住む「アルゴス坂の白い家」におこる悲劇を軸に、原作の作家であるエウリピデスを劇中に登場させ、現代の劇作家の悩みにこたえるシーンも盛り込みながら「ギリシャ悲劇」の構造を分かり易く立体化。実の子供たちに命を狙われる母クリュタイメストラの行きつく先は?
新国立劇場HPから

開幕当初、いきなりミュージカル風オープニングだった。それが、歌は変だし(気持ち悪く音をはずしてた)、踊りも変だし・・・これは先が思いやられるなぁ、と思っていたら、お話のフリでしたw。
演出家の勝山が出てきて「ギリシャ悲劇にミュージカルはあわない」と叫びます。それはそうだろう。(笑)

新作戯曲に取り掛かったが筆が進まぬ島岡は、悲劇の書き方について、エウリピデスに尋ねる。しかし、簡単には教えてもらえそうもない。
そこで途中まで書いた戯曲をエウリピデスに見せることに。

悲劇前半。映画監督、その妻の女優、女優の愛人、女優の息子と娘が、それぞれに愛憎をもって物語が進みます。

第1幕の終盤、エウリピデスが「戦争が悲劇を作ってきた」「戦争を知らないやつに悲劇はかけない」と言うと、なぜか東京の新宿でテロが起きます。日本は戦争に突入する。

ここで島岡は、「平和で何が悪い」と言います。戦争が素晴らしい悲劇を生み出したというエウリピデスの言葉に違和感をもったわけです。

作者は、ギリシャ悲劇が書かれた時代的背景と、現代の平和な日本との違いを踏まえないと物語が成立しないと考えたのでしょうか? 多分、そうではないのでしょう。
幸福なことですが、長い間、戦争を経験していない日本人が戦争に突入したら、ギリシャ悲劇的な事柄がおきても不思議ではないと考えたのか? これも違うのだと思います。
テロが起きれば日本も戦争に突入しかねないよ、という考えが根底にあってギリシャ悲劇と重ね合わせたのか? これもシックリきません。
ここで分かるのは、平和の中で育ってきた日本人がアガメムノンやオレステス、エレクトラなどの人物像が理解できないであろう、また、それを考えることも望まないであろうという、作者の諦め。
そういうお話の根幹が、私にはあわなかったのかもしれません。

頼りなくなったアガメムノンに失望しているクリュタイメストラは、アイギストスに殺害するように言います。しかし、アイギストスは「自分に殺意などない」と断る。
“?” あれあれ、話が違うぞ。(笑)
アガメムノンが殺されないと、その敵を討つためにエレクトラとオレステスが母・クリュタイメストラを殺す展開にならない。
自分たちの宿命に縛られたい登場人物は、ここで、相談します。高尚な悲劇を完成するため運命づけられたことは実行しなければならない、だから「殺される振りをする」ことにしよう。このクリュタイメストラの提案に皆がのることに。
それぞれが決められた殺しのふりをし、殺されたふりをする。茶番とも思われる演技のはてに、もちろん、デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)、『恵み深い女神たち』は現れない。

結果的にそれぞれが自由な生活を送っていきそうです。・・・この終わり方で良いのかな? これも良く分からない。

難解そうに見えますが、ギリシャ悲劇の人間関係を頭の隅に置いておけばOK、難しくありません。
深く考えなければ、面白いエンターテイメントになっていると思います。

最後のところで、クリュタイメストラがスープを作っていました。毒気がありますね。(ギリシャ悲劇の中で、自分の子供の肉の入ったスープを飲まされるエピソードは、アガメムノンの父と叔父が出てきますよね)

ちなみに、アルゴスとは、全身に百の目を持ち、時間的にも空間的にも死角が無いギリシア神話に登場する魔神。ヘルメスにより葦笛の音で全ての目を眠らされ、殺されてしまう。

070920 トロイ遺跡 図.jpg蛇足ながら、トロイについて。
トロイ遺跡は、T〜Z層に分類されています。Z層以降(8、9層)は、ギリシャなどの街が作られたようです。トロイの木馬で知られている「トロイ戦役」はこのZ層当時(紀元前1300年から紀元前1200年)に当たり、シュリーマンの発掘によって崩壊(宝物もドイツへ運び出された)、ほとんどが消失してしまった。よって、トロイ遺跡がホメロスなどに書かれたトロイの遺跡なのか否かは、不明のままです。

Z層以降にトロイの遺跡は出てきていません。
結局、報復の応酬はトロイの滅亡により終止符が打たれたというのが真実なようです。

070530 トロイ.jpg← 今年の5月、トルコ観光の際に撮った写真








この記事へのコメント
こんにちは、はじめまして。
私は「アガメムノン」とか「エレクトラ」とか
ギリシャ悲劇は読みましたが、
「アルゴス坂の白い家」は結構、筋を
変更してあるようですね。
Posted by ryotaro at 2008年05月16日 23:48
ryotaroさん、コメントありがとうございます。
新国立の2007/2008シーズン・ギリシャ悲劇を題材にした「三つの悲劇」(三部作)は、失敗だったと思います。
主催者の企画意図が不明だったのか、依頼された作者さんたちがヤッツケ仕事をしたのかしら? とにかく、つまらなかったですw。

6月から「シリーズ・同時代」と銘打って3作品の公演があるそうです。どういう作品になるのか、注目してみようと思っています。

こんなブログですが、また、寄ってみてください。よろしくです。
Posted by MOTO at 2008年05月17日 21:09
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『エレクトラ』エウリピデス
Excerpt: 前出の『アガメムノン』と関係ありますが。 アガメムノン王を妃のクリュタイメストラが殺してしまう。 子供のエレクトラとオレステスが仇を討つ話。 姉のエレクトラの方が弟のオレステスより母を殺すのに積極的..
Weblog: ryotaro1968の文学散歩
Tracked: 2008-05-16 23:45