150131 sansaku rogo T.jpg散策しているような日常のなかで、素晴らしいものが見つけられたらうれしい。
そんなことを考えながらブログを書いています。

2008年11月06日

「山の巨人たち」新国立劇場

081029 yama no kyojintachi.jpg原作はイタリアのノーベル賞作家ルイジ・ピランデルロ(1867〜1936)。この作品は未完の遺作です。
演出は、パリ・オデオン座の前芸術監督ジョルジュ・ラヴォーダンさん。この作品は完成されていない最後の部分を演出家に委ねられることになる。ジョルジュ・ラヴォーダンさんが、どう完結させるのかも楽しみでした。

現実と夢、幻が交錯する迷宮に入ってしまったような物語なので、難解だと言われています。
物語の解釈とか、時代背景との関係とか、個々の台詞と人物像の成り立ちとか、全て理解しようとすると混乱するかもしれません。そういう意味では難解です。
しかし、自分の感覚で素直に観ていると、そこにあるインテリジェンスを感じ、個々のキャラクターが浮き出てきます。
未完であることからくる難解さはあると思いますが、総じて難解な芝居ではありません。
面白いお芝居です。


「山の巨人たち」
作     ルイジ・ピランデルロ
翻 訳   田之倉稔
演 出   ジョルジュ・ラヴォーダン
出 演
  コトローネ ・・・・・・・・・ 平幹二朗
  イルセ ・・・・・・・・・・・ 麻実れい
  伯爵 ・・・・・・・・・・・・ 手塚とおる
  ディアマンテ ・・・・・・・・ 田中美里
  バッターリア ・・・・・・・・ 綾田俊樹
  ズグリーチャ ・・・・・・・・ 田根楽子
  クローモ ・・・・・・・・・・ 大鷹明良
  スピッツィ ・・・・・・・・・ 植本潤
  小人クアケーオ ・・・・・・・ 及川健
  ドゥッチョ・ドッチャ ・・・・ 久保酎吉
  サチェルドーテ ・・・・・・・ 渕野俊太
  ミロルディーノ ・・・・・・・ 細見大輔
  ルマーキ ・・・・・・・・・・ 大原康裕
  マリーア・マッダレーナ ・・・ 真織由季
  マーラ・マーラ ・・・・・・・ 佐伯静香
アコーディオン   小春
ヴァイオリン    澤田若菜
会 場  新国立劇場 中劇場(2008年10月14日〜11月11日)


<以下、ネタバレあります。ご注意を!>
ものがたり
世界から隔絶した山間に建つ一軒の別荘「ラ・スカローニャ」。この別荘の主は世界に絶望し隠遁生活をおくる魔術師コトローネだ。ある日この別荘におちぶれた旅の一座がやってきた。伯爵夫人と名乗る主演女優イルセは正気と狂気を行き来している。劇団員は別荘に一夜の宿を借りた。その晩、彼らは夢の中に引きずり込まれ、幻想的な体験をする。翌朝コトローネは、劇団員たちにある提案をもちかけた。「山の巨人と呼ばれる二家族の結婚式の余興に芝居をしてみてはいかが」と・・・・
(新国立劇場HPから引用しました)

八百屋舞台どころではない、太鼓橋のような傾斜を持たせた舞台でした。前に来ると凄い傾斜です。
役者さんたちは、大変だったでしょうね。(腰にくるんですよね)
多分、この橋は、黄泉の国への入り口なのでしょう。三途の川に架かる橋。

印象としては、この山間のコローネと住人たちは社会から締め出された人間。
一座の団員は、落ちぶれ、現実社会からコローネの仲間になりかけている。
“山の巨人たち”とは、あまりにも凶暴である現実社会なのでしょう。

一座の団員たちは、夢と幻の中に引き込まれ、心の中の闇を見せられます。
戸惑いながらも、自らの状況、現実を認めざるを得ない。団員たちは猜疑を持ちおそれます。
それでも、山間の住人たちは距離を保ちながらも団員たちを許容しているようです。

コローネは、一座に“山の巨人たち”の前で芝居をしろという。つまり、もう一度、凶暴な社会の前に曝そうとするわけです。社会に戻られるという誘惑をして。

3幕で絶筆したお芝居は、結末が用意されていません。
演出・ジョルジュ・ラヴォーダンさんは、作者・ルイジ・ピランデルロが息子の語った内容を字幕で流すことにします。
・・・山の巨人たちは、この一座の芝居を見ることもせず、団員たちを殺してしまう・・・

現実味がある恐ろしいことになっていますね。


日本では、なかなか観ることができない、観念的であるようで複雑に巡らせた物語がそれぞれ意味を持って訴えてくるようなお芝居でした。
秀作、面白かったです。


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